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ベルクハイデにエデンが出現するという事件が起こった後。
再び出会えたという感慨に浸るまもなく、フェルトたちは急いでエデンまで向かっていた。
しかし、アルテナ教会を出たその日のうちに西セセイル平原を抜けたものの、フェルトたちが橋砦ゼーユングにたどり着くことができたのは、日が暮れてからだった。
「ミッドガルドまで距離がある。急いで行って疲れて何もできんというのが一番問題だろう」
視界に広がる湖に浮かぶ、故郷。
暗い夜の中にあるその姿を目にしながら、その場所へたどり着けないことに焦りを隠せないエデンの二人に向かってグレイが言い、そしてその言葉を受け入れた一行は、その日は橋砦で休むことにした。
食事時であっても、その後も。
エデンを思うのか自然と、フェルトとヴィーゼの口数が少なくなっている。
そんなヴィーゼを元気付けようとポウが必死で話しかけていたのだが、あまり成果は見られない様子だった。
夕食後なんとなく皆で集まっていた時、途中席を立ったヴィーゼを追って部屋を出て行ったポウが、がっくりと肩を落として戻ってくる。
その後に、なにげなくフェルトが立ち上がってポウと入れ替わるように部屋を出て行った。
ぱたりと扉が閉められるまで、その姿を目で追っていたノインは、ふっと小さくため息をついた。
(まあ、ね…。長い間ずっと会ってなかったわけだし…アルテナ教会の時は話しするどころじゃなかったし…)
迷わずにまっすぐフェルトに向かって飛び込んでいった彼女。
そしてフェルトも、躊躇することなく彼女を抱き寄せていた。
(…なんか、重い…)
思い返せば、あの場面を目にしたときと同じに、胸の奥が苦しくなる。
ふるふると首を振ってノインがその場面を忘れようとすると、今度は先ほどのフェルトの後姿が浮かんだ。
ついでに道中の二人の様子まで思い出してしまって。
泥沼だ。
頭を抱えたい衝動を何とか押さえ、ノインは頬杖をついた片手で顔を覆う。
どうしようもないことなのに、そう思うのに心は勝手に言葉をつむいでいく。
(きっと、今もヴィーゼの傍にいるんだろうな…)
アルテナ教会を出て、ゼーユングまで。
その道中、フェルトはずっとヴィーゼの隣にいた。
いつもしんがりをグレイに任せ、先頭を行くのにその時は違っていたのだ。
それに獣や魔物に出会ったときにも、彼女を庇う動きは自然で。
なんとなく、二人の関係を見せつけられたように感じてしまっていたノインは、そのことを思い返し再びため息をつく。
…部屋を出て行った二人はしばらく、皆のいる部屋へは戻ってこなかった。
ヴィーゼの傍にフェルトがいること。
その意味を、部屋に残された者たちはそれぞれに考え納得していたが、彼らがフェルトの行動の意味を知ったのは、しばらく後のことだった。
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