おはなしにならない。(マナケミア編)

 

 

おはなしにならない


その名のとおり、お話にならなかったものを放り込んでいます。

続きがあるようでなかったり、続き物のようにみえても、実は前置きは何もなかったり。

そんなものです。

 

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設定 
場所:宇宙空間を航行する戦艦内。勝手に命名駆逐艦『アイシオン』(名前は錬金術の本から適当なのを抜粋)

ヴェイン:中佐 艦長
ロクシス:少佐 参謀・副艦長(兼任)
グンナル:大佐 操舵・戦隊長(大佐待遇は地上戦時。通常は操舵)
フィロ:中尉 砲手・副操舵
ニケ:中尉 小型機操縦士
アンナ:少尉 通信(レーダー探索(砲手サブ)・小型機操縦も可能)
パメラ:大尉 補給・衛生(幽霊なのはかわらず)
ムーペ:少佐 機関士(でも駆動部には近づかない)

もうひとりのヴェイン:少将 別艦隊所属。いわゆる『提督』

艦室内(艦長室)
その日(正確には標準時間14:25)数ヶ月にわたる護衛の任を終え、駆逐艦アイシオンは機首を本部…通称『学園』と呼ばれる方向に向け、航行していた。
同様に、アイシオンの艦からすこし離れて別の駆逐艦が移動している。
それを小さな窓の向こうにうつす艦内。その一室でヴェインは通信画面に向かい合っていた。
そこには鏡を移したかのように、彼そっくりな人物がうつっている。
違いといえば、彼の着ている服についている略章の数だろうか。
「え?休暇?」
『そう。こんどの休暇は一緒に取れるから。サルファも連れてどこかに遊びに行こうよ』
「…」
『どうしたの?もしかしてもう予定入れてる?』
本来ならこんなに気安い口調で話せる相手ではないのだが、肉親ということもあり私的な通信では自然と家にいるときのような会話になる。
彼の予想外に黙ってしまったヴェインに、相手は小さく首をかしげた。
ヴェインは申し訳なさそうに頷く。
「うん…ろ…参謀と戦隊長と一緒にご飯食べに行くって約束しちゃったんだ」
『…ロクシス=ローゼンクライツ少佐とグンナル=ダム大佐?』
相手の声のトーンが一段下がったのだが、それには気づかないままヴェインは別のことに感心した。
「先輩のフルネームよく知ってるね」
『君の周りの人間のことを調べるのは当然でしょ』
「当然なのかなぁ…。そういうわけだから遊びに行くのは難しいよ」
『断っちゃえばいいじゃないか。そんなの』
ヴェインと双子の弟は、こんな時はとてもこどもっぽくなる。
態度はヴェインよりも大人びているのだが、言う内容が、だ。
ヴェインはそんな彼を諭すようにふるふると首を横に振った。
「だめだよ。先に約束したんだから…あ。もうすぐ休憩時間が終わるから切るね」
『まだ時間はあるじゃない。ねえほんとにだめなの?』
「…君、また何かした?通信切れないよ」
『優先権は僕にあるもの。切れないよ』
けろっと、なんでもないことのようにそんなことを言われて、ヴェインは「はぁ」とため息をついた。
「時間に遅れてロクシスに怒られるのは僕なんだよ、もう…」
ーパシっ
ヴェインが言い終わらないうちに、擦過音と空気が抜ける音が響き、廊下につながる扉が開いた。
「ヴェイン艦長、いつまで休んでいる気ですか」
「…ああ、きちゃった…」
案の定、そこには副官のロクシスの姿がある。
ヴェインの呟きを聞きとがめて、その眼鏡の奥の目が眇められた。
「私が来て何かまずいことでも?」
「ううんそんなことない…」
『ローゼンクライツ少佐?』
さらに小言を言おうとしたロクシスだったが、通信画面からかけられた声に一瞬言葉を止めた。
「アウレオルス少将…お話中でしたか」
「うん。大事な話。だからさ、もうしばらくどっかいっててよ」
気安い口調のそれに、ロクシスは気づかれないように眉をしかめると、じろりと画面の奥をにらんだ。
「艦長の休憩時間は終了しています。私的なものは後日にしてください」
言い切ると、画面の中の相手は、さらに笑みを深くした。
だが、それは自身の半身と呼べるヴェインに対しては向けない種類のもの。
「少佐、聞こえなかったの?僕は出てけって言ってるんだよ」
「その言葉そっくりお返しします。仮にも提督と呼ばれる方が公私混同は控えてください」
丁寧口調ながら、返すこちらも、どこか緊張感が漂っている。
その2人の間で、ヴェインは気づかれないようにこっそりとため息をついた。
…いつになったら2人とも仲良くしてくれるようになるんだろう…。
休憩中の通信や休暇でばったりあっても、最後にはいつもおなじパターンになる。
(いっそのこと、ロクシスたちも誘ってみんなで遊びに行けばいいのかなぁ…)
それはそれで双方から反論が返ってくるのだが、その時は真面目にそう考えていた。


艦橋
「ああああ―――っ飽きた――!」
砲手台兼副操舵席に座っていたニケは椅子に座ったままぎゅうっとせのびをすると詰まっていた息を吐き出すようにして叫んだ。
「叫ばないでください。そんな大きな声を出さなくても聞こえます」
すこし離れた席に座っているアンナがその声に顔をしかめながら通信用インカムを押さえて振り向く。
「だってさぁ…ずーっと座ってるだけだし、お尻に根っこが生えそう!」
かれこれ5時間近く何もない(石などは飛んではいるが)空間とモニターとでにらめっこしているのだ。自分の仕事の本分が、艦の入れないようなせまい場所、浮遊物の多い場所を小型艇で探索することであるニケにとって、座っているだけ、といっても過言ではない今の状況は苦痛だ。
逆にアンナは通信士のため、こんな状況には慣れている。
定期的に送られてくる信号と進行方向の確認を手際よく行いながら、インカム越しにひとつ上の先輩の愚痴に答えていた。
「仕方ないでしょう?交代で休憩を取ってるんですから。もう少ししたらフィロ中尉が戻ってくるはずです」
「そっかもう少しなんだー、ああ、早く戻ってこないかなーっ!」
「…グンナル大佐の場合は戻ってくるか、微妙ですね…」
「あ…アンナの次の人って…グンちゃん?」
「そうなんです…って、私のことは少尉と。グンナル大佐も佐官なんですからちゃんと階級で呼んでください。ニケ中尉」
「ごめんごめん、ほら、ヴェインがあんまり気にしないからそういうこと」
「艦長が気にしなさすぎなんです…っ」


艦内食堂
「ふん、ふんふふ〜ん♪」
「あら〜お菓子作り?フィロちゃん」
船員たちが遠巻きにしている一区画に、ひょっこりと姿を見せたパメラは目を丸くした。
軍服の上着を脱ぎ、腕まくりをしたフィロが、銀色のボウルを手に振り返る。
「うんvちょっと時間が余ったからみんなに作ってあげようと思って」
甘いものを食べると疲れが取れるでしょ?
お仕事終ったばかりだから、ちょうどいいかなって。
言いながらフィロは「チーン」と鳴ったオーブンを開ける。
とたんに、なんともいえない匂いがあたりに広がった。
遠巻きにしていた人の囲いが、さらに遠のく。
「ねぇ、これなにが入ってるの〜…ちょっと凄い匂い…」
「えっとねー、アンナちゃんに分けてもらった『クサヤ』と『にんにく』。お魚はかるしうむいっぱいで、にんにくは疲れが取れやすいんだって。あとねムーペ君からもらった『濃縮ハチミツ』!隠し味がフィロ特製『紅いバニラシロップ』だよ」
「う〜ん、食べる時には格納庫に行ってね〜。このままじゃ空気汚染が広がっちゃうわ〜」
あそこなら、いざとなれば船外に廃棄できるし。
私のお仕事がふえちゃうのいやだもの〜。
呟きながら、パメラは腕に抱えたぬいぐるみのおなかを見る。
時刻は14:28を指している。
パメラの休憩時間は14:30からだ。
「あら、もうこんな時間。お休みしなきゃ〜。じゃあね、フィロちゃん」
「うん、おやすみ〜」
『待ってください、ここをどうにかしていってください!大尉〜!』という声なき船員たちの願いもむなしく、パメラはふわふわと厨房を出て行った。

機関室(駆動機関部)※注・高温

ごおおおおおおっという重苦しい音が響いている。
艦内のすべてのエネルギーの供給源であることから、その余熱も半端ではない。
熱の発生源近くかつその薄暗さが、むっとこもった蒸気を余計に感じさせる。
警報機の赤いランプが物々しい。
「ムームームーッ!」
「ふふふ、どうだ?熱かろう。いい加減観念して白状するのだ」
「ハクジョウスルコトナド、ナニモナイ」
「むむ、反抗的だな。ならばこうだ!」
「ウアアアアー!!トケルゥウウウっ!」
グンナルがぽーんとロープの端を蹴っ飛ばすと、ぐるぐる巻きにされたムーペが振り子のようにゆれる。
駆動機関と、通路とを行ったりきたり。
「さあ、正体を現せ!軟体生物!」
「ナニヲショウコニ…ワタシハタダノイチグンジンニ…」
「そんな珍妙ななりをしながら平然と軍に入り込むなど、なにか企みがあるにきまっている。いや、そうでなくては面白くない」
「タイクツシノギニ、ヒトヲオモチャニスルナ―――ッ!!」


 

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++++ ホラーぱろでぃ(イラスト部屋に一部ネタあり)


吸血鬼になってしまったゼップルを助けようと、単身彼を追ったヴェイン。
だが何も持たないまま飛び出していってしまった彼には、不死の魔物の力を手に入れたゼップルに対して抵抗する術はなかった。
肩をつかまれ、むき出しにされた首筋に白い牙が突き立てられようとしたとき、間一髪、ヴェインの仲間である二人が駆けつけた。
「ヴェイン先輩!今助けますからね!」
悪霊退散と書いたはちまきにお札を貼り付け、腕には木の杭に、にんにく、御幣をつけた榊を抱えアンナが叫ぶ。
その彼女を従えて、質素ながら使い込まれた十字架を片手に、ロクシスはゼップルめがけて聖水を投げつける。
ゼップルがそれを嫌がるようにヴェインの傍を離れた。
「ヴェイン!」
続くそれは呼びかけではなく、非難の声だった。
ゼップルをかばうように身を乗り出したヴェインは、大半の聖水をその体に受けていた…。

「なにをしているんだヴェイン、さっさとこちらへ来い!」
ゼップルへの攻撃にはならなかったが、ヴェインを助け出すことには有効だったはず。
そう思い呼びかけたロクシスだったが、ヴェインの反応は鈍かった。
「…でも、先生が…」
迷うヴェインの傍に、再びゼップルが現れる。
「ヴェインは僕のことを心配してくれたんだ。いい子だねv」
「あ…ありがとうございます。ゼップル先生」
『いいこ、いいこ』というように頭をなでられて、ほんわかとした空気がふたりの周りに広がる。
対照的なのは、彼らを見ているロクシスたちだった。
ゼップルにはそれまで散々小ばかにされてきた(彼の勘違いを含む)せいで、いい加減忍耐も切れ掛かっている。
「お前はどっちの味方だ。…ええい、これをみろ!」
「ギャーーー!(離せ!お前のような小僧につままれる理由は無い!)」
「ああ!サルファ!」
ロクシスの手に掴まれた、黒猫の姿にヴェインは声を上げる。
「こいつは人…猫質だ。サルファの身がおしくばこちらへもどってこい」
「先輩まるっきり悪役です」
サルファに引っかかれながらロクシスが叫ぶ。その背後でぼそりとアンナが呟いた。
「そんな…サルファ…っ先生…っ」
敬愛する師と、ずっと一緒にいた家族ともいえる猫と、どちらか一方を選ぶなど出来るだろうか。
選ぶことなど出来ない、選択を前に悩むヴェイン。
そのとき突如として、彼らの傍にあった窓が割れた。
月光を弾くガラスを踏みしめ、マントをなびかせた人影が…


「ねぇ〜え〜、あたしの出番は〜?」
「パメラ先輩は少し前にゼップル先生の犠牲になって倒れてます」
「ムーベくんと一緒ー。私は調合釜に隠れて無事だったんだv」
「え〜〜あたし、幽霊なのに〜くすんくすん」
「うちとグンちゃんの出番はもうすぐだね。えーと…なになに」

アトリエに入ったロクシスは目の前で語られている話に、ぴきりと額を引きつらせた。
「…君たちはいったい何をしてるんだ」
「おー、ロクシス」
「こんにちは、ロクシス先輩」
「これおもしろいんだよー。さっきはね、私ザールブルグっていう街の錬金術士で爆弾娘ってよばれてたんだよー」
「フィロちゃんそっくり〜」
「でもいいなーvこんなの作ってみたいかも」
「そんでそんで、アンナがフィロの先生で、すっごく苦労してるの」
「…それが、どう、面白いんだ」
「だってー、ほんとのアンタはパメラに泡吹いてひっくり返るくらいなのに、こっちはすっごい張り切って退治…」
そう言う彼女たちのいるきゃらきゃらと賑やかな一角から、ロクシスは苦虫を噛み潰したような顔で目をそらすと、調合釜の前に自分と同じ被害者ともいうべき少年を見つけた。
「君もだヴェイン。少しは抗議したらどうだ」
「…いや…なんていうかもう…いまさらっていうか…」
八つ当たりも混じって険しくなった声に、ヴェインはどこか疲れた笑みを浮かべる。
「ミゥーー(しょせん紙の上の話だ)」
「うん…だよね。むしろこっちに話がこないだけまし…」
女の子たちで盛り上がっている一角から遠ざかるようにして、かたわらのサルファと顔を見合わせた。
「…君はいつからここにいたんだ?」
ふと、その様子に思いついたロクシスはヴェインにたずねる。
「ん…最初から…かな」
ふっと、どこか遠くに視線を向け応えたヴェインに、ひくっとロクシスが引きつる。
「そ、そうか…」
「うん…」

++++

いきなり○回予告の本版があると思ってください…

         
 

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