ふわふわした、栗色の髪。

 

風が強い日は、おさまりが悪くてすぐに乱れてしまう。

そう言いながら彼女は、言葉とはうらはらに

ここちよさそうに、髪を風になびかせる。

 

 

驚くとまん丸になる、澄んだ青い目。

 

驚かせるつもりはなかったと俺が言っても

次の瞬間にはまん丸な目を、ほんの少し眇めて

ぷくっとほっぺたを膨らませる。

 

 

それはまるで

今この瞬間、目にしたように

はっきりと思い描ける、姿

 

 

傍にいた時よりも

逢えなくなった

 

昼の陽射しや、夜の月星に

風の音に

道行く先の風景に

 

いつのまにか

彼女の姿を思い描いている。

 

 

「ヴィーゼ」

 

夜空に向かって右手をかざし、その名を口にのせた

 

細い月の下、淡く、透き通るような光が

リングを浮かび上がらせる

 

暖かなその色合いに、

そっと、フェルトは目を細める。

 

「もう遅いし、寝てるかな…もしかしたらまだ何か調べ物をして
夜更かししているかもしれないな…」

 

独り言のように口に出せばその姿が脳裏に呼び起こされて

フェルトの口元に淡く笑みがひろがった。

 

「…ヴィーゼ」

 

ほんの少し、響きを変えて

もう一度

知らず、彼女の名がこぼれた。

 

きっと、口に出すフェルトも気づいていない。

ましてや、呼びかけられる彼女も。

 

自らが口にした言葉の理由を気づかないまま

その手の先に重なる

もう一人の手を思い浮かべて

フェルトはゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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