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ひよこレンジ 3
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「おやすみなさい、フェルト、ヴィーゼ」 「おやすみなさい、ルテネスさん」 「おやすみ、ルテネス」 ベッドに横になった二人の返事に頷くと ルテネスは灯りを消してふわりと部屋を出て行く その姿を見送って、扉が閉められた瞬間 フェルトは掛け布を跳ね上げるようにして起き上がった 「ヴィーゼ」 ぽんっとベッドから降りて、すぐ隣にあるヴィーゼのベッドによじ登る 子供用には少し高めのベッドだから、ヴィーゼに手伝ってもらい その隣に上がると、もそもそと掛け布の中にもぐりこんだ 灯りは消されてしまっているから、真っ暗である それでも手探りでお互いの体の場所を確かめると きゅっと手を握りあった。 ヴィーゼは、ふっと安堵の息を吐く 「こわかった?」 「ううん、へいき。フェルトがいるもん」 ヴィーゼは怖がりだ それを知っているのは今のところ枢機院の皆である でも、暗い部屋で一人で寝るのも怖いと知っているのは 院長とルテネスとフェルトだけ だからフェルトはいつも寝るときヴィーゼと一緒にいる ようやく闇に慣れ始めたヴィーゼの目が、フェルトの銀色の髪をぼんやりと捉える 不意に近づいたフェルトの顔に、ヴィーゼは目を閉じる 額に唇の触れる感触があって ぱちりと目を開けたヴィーゼも 次いで フェルトの額に唇を押し付けた 「おやすみなさい」
ほんの少し高いフェルトの体温を感じていると ヴィーゼはいつもほっとする 隣に眠るフェルトの方を向くと規則正しい寝息が聞こえてきて しっかりと握られた手の感触にゆっくりと目を閉じた
もしかしたら、生まれたときから感じあっているのかもしれない ずっと昔から傍に感じている ぬくもり
それは夜の道で 暗い部屋で眠るベッドで 何よりも近く感じていたもの
知らない場所で 知らない世界で
誰よりも近く感じているもの
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